NPO法人After the Rain 設立趣旨書

1 趣 旨
 全国の自死者数は、1998年に急増し、年間3万人を超える状態が続いていましたが、2010年以降は様々な取り組みにより、近年減少傾向にあります。しかし、全国で毎年2万人を超える方が自死で亡くなるという非常事態は未だに続いていると言わざるを得ません。この数を1日に換算すると、およそ60人以上が自死により亡くなっているということになります。1人が亡くなることで誕生する自死遺族を4〜5人と想定しても、毎日300人近く、又はそれ以上の自死遺族が増え続けているのです。(家族だけに限らず、自死で大切な人を亡くした方全般とすると、まさに莫大な人数です。)人に話せない悲嘆を抱えたまま、「生きる」ということに固有の困難を感じている自死遺族への丁寧な支援は、国の自殺総合対策の一助にも繋がると考え、そんな彼らの悲嘆に寄り添い、「生きづらさ」の改善、解消をサポートするため、この団体を設立しました。

 この様に大勢の自死遺族等(自死で大切な人を亡くした方全般。以下、自死遺族等という。)が存在するにも関わらず、社会には自死者(未遂者も含む)や自死遺族等に対する偏見が蔓延っています。この偏見こそが自死遺族等を更に追いつめ、益々孤独にしています。広く一般市民に自死遺族等の現実を知ってもらい、理解を深めるための啓発活動を活発に行うことにより、自死遺族等当事者とそうでない者との共生が叶うと考えます。
 現在、自死遺族支援の電話相談は各地で行われていますが、日中から夜にかけてが中心です。一般的に、仕事や学校など日中は忙しくしている人でも利用できる時間帯であり、より孤独を感じる事の多い夜間から深夜の対応ができれば、一層利用しやすくなるのではと考え、夜間から深夜帯に力を入れた電話相談事業を行います。(一般電話だけでなく、広く若者に向けてSNSや通話アプリも利用します。)同時に、電話相談員の育成を行うことで、一般市民に自死遺族支援への感心を深めてもらうことも可能となります。
 さらにピアカウンセリング(同じ立場にある仲間としてのカウンセリング)事業を展開し、自死遺族等に協力を求める事で、彼らが自ずと集える場を設け、公の場ではなかなか語りづらいことを「人に話せる」そして「受け入れられる」という体験を通し、それまで封じ込めてきたグリーフ(悲嘆)をケアする機会に繋げると共に、自死遺族等の社会生活を充実させることを目指します。
 これらの活動を行うことにより、自死で大切な人を亡くした全ての人が偏見に晒されることなく、その命を維持し、伸びやかに生きられる社会の実現に寄与したいと考えています。

 上記目的を達成すべく、組織の基盤を確立し、情報公開を進めることにより社会的な信用を得て、自死遺族のみならず広く一般市民が安心して事業活動に参加できる団体とするためにも、法人化が必要と考え、ここに、特定非営利活動法人After the Rainを設立しました。

2 NPO法人設立に至るまでの経過

2008年4月
~2016年3月
社会福祉法人 愛知いのちの電話協会 研修講師 (岡村晴美)
2009年 岐阜県自死遺族の会「千の風の会」発足 / 代表 (木下宏明)
2010年 岐阜県総合自殺対策協議会委員 (木下宏明)
2011年11月〜 子育て支援かもめ応援団 発足 / 代表 (前田華里)
2012年3月 講演「自死遺族のグリーフとケアへのニーズ」
厚生労働省主催 平成23年度自死遺族ケアシンポジウム
-多様な立場からの「協働」を考える- (川島大輔)
2012年4月〜 社会福祉法人 愛知いのちの電話協会 事務局長 (兼田智彦)
2014年7月 書籍『自死で大切な人を失ったあなたへのナラティヴ・ワークブック』刊行(川島大輔)
2014年11月 講演「グリーフケア〜ご遺族のための心のケア〜」
国家公務員共済組合連合会主催 第2回終活セミナー (高木繭子)
2016年
2017年8月〜9月
「夏休み無料メール・電話相談」開設
カウンセリングルームQueensberry (高木繭子)
2016年10月 社会福祉法人 愛知いのちの電話協会「自死遺族支援勉強会」発足
2019年3月まで 代表 (高木繭子)
2017年4月〜 浜松市精神保健福祉センター 遺族相談 スーパーバイザー (川島大輔)
2017年9月
〜2019年11月
名古屋市自殺対策計画策定検討会構成員 (川島大輔)
2018年 土岐市自殺対策行動計画策定委員 (木下宏明)
2018年〜 岐阜いのちの電話相談員養成講座講師 (木下宏明)
2018年9月 書籍『子どもの自殺予防教育プログラム-GRIP』刊行 (川島大輔)
2019年4月〜 社会福祉法人 愛知いのちの電話協会 電話相談委員長 (高木繭子)
2019年6月 講演「自死について考えること~自死遺族への気づき」
名古屋市生涯学習センター
ーその気づきで、心が軽くなる~偏見のない社会を実現するためにー(高木繭子)

 以上の活動を通して、自死遺族への支援の重要性を痛感した高木、兼田から、自死遺族等(自死で大切な人を亡くした方全般)に特化した「夜間〜深夜帯の相談電話」の開設を呼びかけ、これに賛同した鹿島と共に3名で新団体設立を決意。長年自死遺族に寄り添い、彼らの抱える様々な問題やグリーフケアに関わっている川島、木下、他が、更なる画期的な自死遺族支援の充実のため、設立に賛同。自死遺族の弁護を数々担当する岡村と、「生きづらさ」を抱える子どもとその親の支援に携わる前田がこれに加わり、加藤、宮島、他の賛同者も得て、令和1年5月8日、設立総会を開催。NPO法人設立に至る。