理事長挨拶

24歳の冬、私は父を自死で亡くしました。寒い空がまだ明けきらない時刻、病院の待合室で、母が私に最初に言った言葉は「自殺って言っちゃダメよ!」でした。それ以来、父の死因を人から訊かれると、様々な嘘を重ね、その度に罪悪感に打ちのめされました。表面にはいつも中途半端な笑顔だけを張り付けて、心はどんどんうずくまっていきました。

当時はまだ、「自死」という表現が使われることも「自死遺族」という存在が認知されることも少ない時代でした。私たち自死遺族は表には出ない存在であり、そのことから社会に理解されないまま取り残されてきてしまったように感じるのです。現在では、社会の理解も徐々に広まりつつあり、自死遺族のための相談機関も整ってきています。それでも、大切な人を「自死」という形で亡くした人たちの個々の苦しみや悲しみは、今も昔も何も変わりません。

「話したいけど話せない」「わかって欲しいけど、わかってもらえるわけない」などの葛藤を抱え、夜、ポツンと一人になった時間の虚無感、喪失感、孤独感に押しつぶされそうになることもあるでしょう。私もそんな時間を嫌という程重ねてきました。そこで夜間気軽にかけられる電話があったら、少しはその重荷を軽くする一助になれるのではと考え、電話相談を受けることのできる数人に声をかけました。そこからあっという間に賛同してくれるメンバーが集まり、こうして私たち【After the Rain〜自死で遺されたあなたへ〜】の活動はスタートしました。

また、私は仕事柄、自死で大切な人を亡くした方々と直接お話しをする機会に恵まれています。そんな中で「何かできることがあれば教えてください」「私にも活動できる所はありますか?」など、積極的に参加できる場所を求める声が実に多く聞かれるのです。私たち人間は「生きがい」を求める生き物です。「自死」という出来事を身近で体感し、「死」を実感した人たちにとって、After the Rainが「生きる」意義を見つめ直し、共に「活きる」ための居場所となることを願っています。

NPO法人After the Rainは、自死で大切な人を亡くされた当事者の方だけではなく、全ての一般市民の皆さまのご協力により運営しています。一緒にボランティア活動にご参加くださる方、アイディアや専門知識をご提供くださる方、ご寄付により活動を支えてくださる方、様々なお力が必要です。これから末永く活動を続けていくため、それぞれの形で、私たちAfter the Rainをご支援ください。何卒よろしくお願いいたします。

最後になりますが、この度の法人設立にあたり、惜しみないご協力並びにご尽力くださいました大勢の皆さまに、この場をお借りしまして、心からの感謝を申し上げます。皆さまのお力添え無くしてはここまで漕ぎ着けることはできませんでした。いよいよここからが出航です。今後も引き続き、私たちの活動をどうか暖かく見守ってください。

2019年 夏
NPO法人 After the Rain〜自死で遺されたあなたへ〜
理事長 高木繭子